新型コロナ対策の経済学
林先生の提言が話題だ。
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経済学的なBackgroundを考えると理解できる部分も多い。
基本的な経済学のモデルでは、「消費者」はリスク回避的で「企業」はリスク中立であることを仮定する。
アセットプライシングとかをやってると、直面するパラドックスとして
- 市場の効率性を考えると企業はリスク中立的であるべきだ。(マーケットリターンと相関していない、いかなるリスクもヘッジするべきでない)
- 一方、企業はリスク回避的な行動をとっているように見える
というものがある。
標準的な経済学的な理解としては、無駄なリスクを企業がとってるのが”謎”に見える。
一方、現実的には企業も支援すべきだと思う。リスク中立的な企業は倒産の社会的なコストを考えないことによって、社会厚生を損ねている可能性がある。
なぜなら
- 企業の倒産に際して、Default Costが生じる。それらは社会的なコストである。
- 企業SpecificなHuman Capitalが存在する。倒産によってそれらが失われるのは社会的なコストである。
そう考えると、両者を考慮して産業ごとに支援するか決めるべきのような気がする。
たとえば、国民民主党の玉木代表は以下のように述べている。
苦しい大家さんが「来年度」の固定資産税を減免されることで救われますか?それでテナントさんの家賃を猶予する十分なインセンティブになりますか?損金参入についても家賃収入が減れば法人税負担は自然と減るので効果は限定的でしょう。政府の政策も否定しませんが、ぜひ家賃支払い猶予法に協力を! https://t.co/1WDIX4h7cL
— 玉木雄一郎🍵 田中けん42才@静岡4区 (@tamakiyuichiro) 2020年4月18日
不動産業に企業特殊的な人的資本の蓄積があるかどうかは微妙だと思う。
所有者が破産しても失われるものがあるかは、(当然業態によるが)あまりない気がする。
そう考えると、大家さんと支援する必要はなさそうだ。
一方、製造業や建設業など、企業SpecificなHuman Resourceが存在しそうな産業は支援した方がいい気がする。
林先生の主張は、ややナイーブな経済理論に基づいているような気がするので賛成しかねる、というのが率直な感想だ。