経済学雑感

経済学者です。

住居選択の経済学的考察:修繕積立費・管理費

修繕積立費・管理費雑感

マンションを探していて初めて知ったことのうちの一つに「修繕積立費と管理費は物件ごとにかなりばらつきがある」ということだ。
正直なところ、なんでこんなに物件ごとに費用が違うのかよくわからない。
結局買った物件は、65平米ぐらいで管理費・修繕積立費がそれぞれ1万円ぐらいだった。
物件探し中に冷やかしに見に行った物件「シティータワー・ルフォン九段の杜」だと、70平米の物件で管理費35,000円、修繕積立費41,000円で、合わせて月に7,6000円かかるようだ。*1
7,6000円あったら新しく部屋借りれるんじゃん?っていうレベルの額だ。

管理費に関しては、

  • 24時間有人の管理人がいる
  • 各階でゴミ出しできる

とかで結構変わってくるように思う。

修繕積立費に関しては、素人では判断しようがないので「まともな長期修繕計画があれば良さそう」ぐらいに思っている。

修繕積立費・管理費と物件価格

物件価格はストックの価格で、修繕積立費・管理費はフローの費用なので、いまいち比べにくい。
例えば、二つの物件AとBで迷っているとする。物件としては両者が同じぐらい魅力的だと思っているとする。
Aの修繕積立費・管理費が2万円、Bの修繕積立費・管理費が5万円だったら、どっちを買うべきか?

AとBが同じぐらい魅力的で価格が同じだったらAの方がランニングコストが低いからAを買うべきだ。
では、BがAよりいくら安ければBを買うべきだろうか?


まずは簡単なケースで修繕積立費・管理費とストックの価格を比べる方法を考えてみる。

30年で住み替えると想定する場合

1%の利率で30年ローンを組むと、だいたい300万円借りると月々の返済が1万円になる。
AとBの修繕積立費・管理費の合計は3万円の差があるので、3×300=900万円の差が物件価格にあれば、毎月の返済額は同一になる。

自分が物件価格と修繕積立費・管理費を比べるときには、この方法で考えてた。
だいたい月のコスト1万円を物件価格300万に変換してランニングコストが違う物件同士を比較していた。
若干正確じゃないとは思う。でも、簡単だし、まぁ、だいたいあってるかなぁと思う。


全部フローに直す

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でも書いたけど、経済学者的には全部をリアルコストに変換した方が理解しやすい。
例えば、物件価格の1.5%が物件の経年劣化ならば、リアルなコストが物件価格の1.5%+修繕積立費・管理費(+その他ランニングコスト)になるわけだ。

まず、月に1万円の修繕積立費・管理費の差は、年に12万円の差になる。
次に、物件価格が100万円高ければ、経年劣化のリアルコストがプラス1.5万円になる。
住宅ローンの利率が1%なら、プラス1万円。
結構考えるのがめんどくさいのが、不動産会社に払う手数料
売買手数料も考えると、+3%(売って買うことを考えると+6%)の差がでるのんだけど、これはフローのコストじゃない。
色々めんどくさいので適当に、リアルコストが全部でプラス3万円ぐらいっていうことにしよう。
そうすると、物件価格が12÷3×100=400万円違うと月のランニングコスト1万円の差に対応するということになる。

なぜ二つの手法で額が異なるのか?

前者では、「返済額が同一になる」という点から1万円の差を考えたが、経済学的には全く正しくない議論だ。
そもそも、必ず35年住み続けるわけではない。
そして、35年で住み替えたとして、リセールバリューが違うので、それを考慮していない。
前者がランニングコストを過大評価している(400万>300万)最大の要因は、リセールバリューを考えていないことだと思う。
物件価格が100万円高ければ、35年後のマーケットバリューも高いはずだ。
住宅ローンの利率が低いことを前提にすると、物件価格が高いことのデメリットはあまりない。

一方、後者は経済学っぽい均衡概念を使っている。つまり、買った物件はマーケットのフェアバリューだし、いつでも自分の好きな時にまたフェアバリューで売れるという(非現実的な)仮定をしているのだ。

まとめ

自分の意思決定の際には、だいたい「月に1万円の修繕積立費・管理費の差は、物件価格に直すと300万円の差」と思って物件を検討していた。

*1:正確には、修繕積立費は最初の5年は5,000円、6から10年目は19,000円、11から15年目は33,000円、それ以降は41,000円みたいだ。